Doo-Bop

Doo Bop
1991年9月28日に逝去したMiles Davisによる最期のスタジオ・レコーディングを含む遺作。プロデュースにEasy Mo Beeを迎え、ジャズ・サイドからのヒップホップへのアプローチを越えて、ヒップ・ホップとジャズの対等なコラボレーションと形容される。Milesのトランペットよりもジャズ・ヒップホップとしての印象が強いのは、Mo Beeが(アルバムとしての曲数が足りないために)Milesの旧録から「High Speed Chase」と「Blow」を新たに作り上げたことにもよるのだろう。ジャズとヒップホップという二者関係の主客はどちらなのか、そういったことを含めたセンセーションとともに、大きな影響を及ぼしたことに違いはない。少なくとも、アメリカにおいてジャズとは黒人音楽であるという定式が根強いことを感じさせる。その意味で、ヒップホップとジャズが結びつくことは必然であったのかも知れない。イギリスでは、ジャズやレゲエ、ラップすら、いとも簡単に白人文化に取り入れられていったような状況とは対照的に映る。イギリスのアシッド・ジャズがロックとすら融合するのに対して、アメリカではそれがほとんど見られない。ともあれ、アルバム冒頭「Mystery」〜「The Doo-Bop Song」(Kool & The Gang「Summer Madness」などからサンプリングされている)にかけての透徹したアーバンな感覚はMilesならでは。