Screamadelica

Screamadelica
Bobby Gillespie率いるPrimal Scream。今さら説明不要だろうが、1982年にスコットランドで結成、85年にCreation Recordsと契約し、このレーベルとともにブリティッシュ・ロックの歴史に大きな足跡を残したバンド。87年にはファーストアルバム『Sonic Flower Groove』、89年にはセカンド『Primal Scream』をリリースしており、本作は実質的にはサードアルバムにあたり、ロックとアシッド・ハウスを越境する名作。はじめてこれを耳にしたとき、ロックであるとは思えなかったのも当然かもしれない。
Andrew WeatherallThe Orb、Boys Own ProductionsのHugo Nicolsonなどダブ〜アシッド・ハウスのアーティストがプロデュースを手がけることで、既存のロック・バンドのサウンドと言うよりも、むしろダンス・カルチャーから生まれたサウンドに聴こえる。もっとも、ジャンルなど「作り手」が必ずしも決められる代物ではないし、「受け手」であるオーディエンスが誤解する余地も残されている。然るに、90年代的なUKサウンドとして必然的に生まれたように思える。シタールがフィーチャーされる(イギリス植民地のインドはUKサウンドのもうひとつのルーツなのかもしれない)「Slip Inside This House」はそのタイトル通り、アシッド・ハウス的ダブ・サウンドであり、「Higher Than The Sun」はBass-O-MaticやBomb The Bassを彷彿させるブリブリと轟く重低音ベースが特徴的なブレイクビーツであり、「Loaded」はグラウンド・ビート的ですらある(明らかにArt of Noiseの「Art of Love」と同じリズム・サンプリングである)。このハイブリディティはロックという文脈に回収され「デジロック」とも呼ばれるような形に収斂していくが、さまざまな切り口は見出せる。