MU

MU

アメリカ・オリジンのUKからの回答」という決まり文句を覆し(逆に問いかけ)、エレクトロ・ミュージックを諧謔のなかに沈めたKLF。1987年、Bill DrummondとJimmy Cautによって結成。彼らは南アフリカで生まれ、スコットランド国境近くに育ったといわれる。当初、“The Justified Ancient Of Mu Mu”(略して、“The JAMs”というのも諧謔)として活動。その後、“Kopyright Liberation Front”(著作権解放戦線)、略称“KLF”として活動する。経緯のすべてはつくられた諧謔でもあり、同時にハイパーリアルでもある。“THE GULF”と書かれた巨大な掲示広告の“GU”の部分に、上から“K”と描きなおし(もちろん違法)“KLF”と読めるようにしてしまった(左画像)。このことでもクレームを被るが、「The Queen and I」という曲でABBAの「Dancing Qeen」をサンプリングしたことでも訴えられている。そのせいで、デビュー・アルバム『1987』は発売禁止処分となる。この事件を契機に、KLFはセールス的な志向に傾倒する。実は、「What Time Is Love?」や「3 A.M. Eternal」といったアシッド・ハウスの名曲は、事件翌々年の89年に生み出されている。しかし、90年、この流れからは奇異に映るアルバム『Chill Out』をリリース。アンビエントに彩られたこのアルバムは、彼らを支持するレイヴ・シーンを裏切るような、セールスを無視したかに見えるものだった。まるで、自虐的であるが、かえって両者を結びつけてしまう結果も生んだ。91年、掌を返したかのように、前述の二つのヒット曲を再録してリリース。White Room世界的なセールスを記録する。同年、未完の映画“White Room”(これも、諧謔)のために書かれた曲を集めたアルバム『White Room』(右画像)をリリース。そして、92年突如引退。97年に“2K”という名義で復活するも、もはや「過去の人」だった。
『MU』は日本限定盤のミニ・アルバム。「America: What Time Is Love?」が収録されている点だけでも、価値はあるかもしれない。Glenn Hughesの声とハードロックなギターが印象的なこの大袈裟な曲は、当時の日本でも街角至る所で聴かれた。バレアリックといえば聞こえはいいが「何でもあり」的サウンドの記念碑。
1. 3 A.M. Eternal(Live at the S.S.L.)
2. Justified and Ancient(All Bound for Mu Mu Land)
3. Make It Rain(Extended Version)
4. Last Train to Trancentral(Live from the Last Continent)
5. America: What Time Is Love?